シミュレーション解析技術の確立

画期的な解析手法を確立し、
浮遊式海中ケーブル寿命の正確な推定を可能に。

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FITEC ソリューション事業部 第2ソリューション部 CAE課(当時)
村田 雅彦

田口 悠嘉の写真

FITEC ソリューション事業部 第2ソリューション部 CAE課(当時)
田口 悠嘉

波や潮流の過酷な環境下で性能を発揮し続ける
浮遊式海中ケーブルを開発するために

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福島県の沖合、約20キロの海上でいま、『福島復興・浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業』が進められています。これは、経済産業省から事業を受託した『福島洋上風力コンソーシアム』が、2011年度から取り組んでいるプロジェクトで、浮体式洋上風車発電設備3基と、浮体式としては世界初となる洋上変電設備で構成された発電システムを設置し、安全性・信頼性・経済性を実証しようというものです。これが成功すれば、今後、大規模な浮体式洋上発電の事業化が可能となり、雇用の創出とともに、東日本大震災から復興した福島の象徴になると期待されています。
古河電気工業(古河電工)様は、コンソーシアムに参画されている1社で、浮遊式海中ケーブル(ライザーケーブル)と海底ケーブルの開発から据付を担当されています。海底ケーブルの開発で特に難しいのが、発電設備と変電設備、変電設備と海底ケーブルをつなぐ「ライザーケーブル」です。というのも、波や潮流の影響で設備が動くたび、さまざまな方向へケーブルが引っ張られるからです。しかし、台風など波の動きが厳しい環境下でも、20年にわたって故障なく電力を送り続けることが求められるため、「その要求に応える製品を開発するため、ライザーケーブルの挙動解析と疲労解析を、古河電工様の情報通信・エネルギー研究所 海洋エネルギー開発課と協力して、実施することになりました」と、今回の解析プロジェクトを統括する村田雅彦は語ります。

2013年11月、激しい潮流にも耐えられる
信頼性の高いライザーケーブルで、送電を開始

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古河電工様は、140年にわたって、電力ケーブルや光ファイバケーブルの開発・製造を行っていますが、特に高電圧のケーブルは、万が一、疲労による漏電があれば、人命にも関わります。FITECは古河電工グループの一員として、40年以上にわたって、「送電線や地中ケーブルをはじめ、自動車用の配線ケーブル、光ファイバ、さらには石油やガスを輸送する海底パイプなど、特殊な分野の製品開発時における解析を、独自のシミュレーションシステムを構築して担当してきました」と言うのは、村田と一緒にプロジェクトを推進した田口悠嘉です。こうした取り組みを通じて培ったノウハウを活用し、今回のライザーケーブル開発では、実証研究海域の波や潮流に関する事前調査データを利用して膨大な数のシミュレーションを実施しました。その中で特に課題となったのは、どこまで劣悪な状況を想定するかだったと、村田は言います。
「過剰な状況に対応させてしまうと寿命は延びるものの、コストが高くなります。でも安全性は確実に担保しなければなりません。そこで、古河電工様の担当者と何度も議論を重ねて状況設定を行い、必要十分な性能を導き出しました」
この解析結果に基づき、古河電工様は耐疲労特性と遮水性能に優れた22kV用と66kV用のライザーケーブルを開発しました。そして2013年11月、発電設備『ふくしま未来』と変電設備『ふくしま絆』が稼働を始め、2種類のライザーケーブルと海底ケーブルを通じて、洋上発電された電気の福島県内へ向けた送電が開始されました。

画期的な解析手法を考案し、
効率的な疲労寿命の推定方式を提案

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2016年、実証研究は新たな段階を迎えました。発電設備に取り付けたセンサにより、実際に波や潮流でどのように動いたのかという実測データが取得できたことから、このデータを利用して挙動解析と疲労解析を行い、ライザーケーブルの疲労寿命を推定することになったのです。
ところが、実測データは波形が不規則で細かいことから、解析に相当な時間がかかってしまいます。
「実際、1時間の実測データを利用して解析を行うと処理に時間 がかかることから、1年間の実測データを使って処理を行うには膨大な計算に なってしまうことになります。そこで、より効率的な解析を行うための検討を始め、導き出したのが、実測データの一定時間内における平均値を組み合わせて正弦波の規則的なデータに単純化してから解析するという新たな手法です」(田口)
この手法により、1年分の実測データに基づく解析も短時間で終えるという、大幅な効率化が可能になりました。しかも、実測データによる解析と新手法で変換したデータによる解析結果がほぼ一致したことで、新手法による解析評価の妥当性と精度の有効性が実証されました。
「疲労寿命が迅速かつ正確に推定できる方法が確立できたことで、実証中のライザーケーブルの疲労寿命推定では、ライザーケーブルに要求される耐久性20年に対して十分尤度のある性能を持つことも提示できました」(村田)

シミュレーション解析技術をIoTへ展開
トータルソリューションの提供をめざす

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新手法が画期的な成果を挙げたことを受け、村田と田口は、コンソーシアムでテクニカルアドバイザーを務める東京大学工学系研究科の石原孟教授からいただいた了承に基づき、2016年11月に開催された『日本船舶海洋工学会』で、『福島浮体式洋上風車向けライザーケーブルの疲労寿命推定』 という論文を発表。FITECのシミュレーション解析技術の高さをアピールしました。

FITECでは シミュレーション解析技術を応用し、ビッグデータなどさまざまな実測データを効率よく利用するための取り組みを始めています。なかでも積極的に展開しているのが、IoTへの対応です。「その第一弾としてFITECでは、古河電工グループの各工場が取り組んでいるIoT化推進に対応し、分析工程を含み、モノづくりの効率化や品質向上、さらには工場全体の省エネ化にも取り組み始めています」(村田)
今後FITECでは、センサ部門など社内の関連部署を連携させ、さまざまなニーズに対応するIoTシステムのトータルソリューション提供を積極的に行っていく計画です。

田口 悠嘉、村田 雅彦の写真

(左)FITEC ソリューション事業部 第2ソリューション部 CAE課(当時)
田口 悠嘉

(右)FITEC ソリューション事業部 第2ソリューション部 CAE課(当時)
村田 雅彦