30年ぶりの
大規模システム開発プロジェクトの舞台裏に迫る

FITECが古河電工、富士通と一体となり、約3年にわたって取り組んだ古河電工グループの基幹システム開発。初めての挑戦も多かった同プロジェクトにおいて、FITECのメンバーたちが感じたやりがいや難しさ、自らの成長とは?

Talk Member

  • M.Y.

    入社31年目(1993年入社) 工学部 経営工学科

    大学時代は経営工学で、工場の生産管理について学ぶ。
    本プロジェクトでは、プロジェクトマネジメントを支援するPMO(Project Management Office)や購買システムリーダーを担当。
    現在は、基幹システムの保守部門長としてシステムの安定稼働を目指す。

  • M.S.

    入社23年目(2001年入社) 教育学部 生涯教育課程

    文系出身だが、システム分野に魅力を感じて、IT業界を志望。
    お客様と非常に近い存在や社員同士のつながりが深いと感じて入社。
    本プロジェクトでは、周辺システムとSAPを連携させる部分のアプリケーションを担当。

  • H.Y.

    2012年入社 工学部電気工学科卒

    大学は電気工学専攻で、かつ情報セキュリティ関連の研究室に所属していたことから、IT系に絞って就職活動を実施。FITECの社員の方々の人柄に惹かれて入社。
    本プロジェクトでは、周辺システムとSAPをつなぐための共通基盤・インフラを担当。

※ プロフィールは取材当時のものです。

新たにグローバルスタンダードの大規模システムを導入

M.S.
M.Y.さんは、このプロジェクトの初期段階では、プロジェクト全体を見渡す立ち位置のPMOとして参加されていましたが、古河電工が基幹システムを刷新することを決めた背景には、どのような課題があったと思いますか?
M.Y.
古河電工の基幹系業務システムは、新しいものでも10年以上前、古いものでは30年前に導入したもので、老朽化や保守切れが進んでいたことに加え、機能不足やシステム間の連携不足という課題もありました。
M.S.
確かに、以前に私が担当していた経理システムの運用保守でも、システムが限界を迎えつつあるので、新しいシステムに切り替える必要があると感じていました。
M.Y.
そこで、そうした課題の解決にとどまらず、業務の効率化などによって今後の成長を加速させる新システムを構築することになったわけです。そして、グローバルに活動している古河電工では、ITパートナーである富士通との協議の結果、グローバルスタンダードのERPシステムであるSAPを導入することを決定しました。
H.Y.
FITECは、このプロジェクトでどのような役割を担うことになったのでしょうか?
M.Y.
プロジェクトオーナーである古河電工のもとで、富士通はSAP導入プロジェクトの経験が豊富で、FITECは古河電工の既存システムを担務しているという関係にありました。その中で、我々は既存システムとSAPの連携機能を構築する役割を担い、プロジェクトを成功させるためには、3社がいかにスムーズかつ緊密に連携できるかが鍵だと感じていました。しかし、実際にFITECがSAPを把握し始めたのは2社よりも少し後で、要件定義フェーズが終わる段階だったので、「早く2社に追いつかなければいけない」という焦りもありましたね。M.S.さんは、このプロジェクトへの参加が決まった時、どう思いましたか?
M.S.
私はSAP導入時の周辺システムのインターフェースを担当したのですが、過去に似たような業務を経験したことがありました。それに比べると、今回は責任の範囲が広くなるので不安もありましたが、「面白そう!」という感覚の方が強かったですね。また、規模が大きいので、やりがいも大きいと感じて参加しました。
M.Y.
私もM.S.さんと同じで、グローバルスタンダードのSAPに携われることにワクワクしていました。開発体制も多い時は300人以上が関わって、FITECだけでも50~60人は参加していたので、今まで経験したことのない規模でしたね。その一方で、SAPについては導入に失敗する事例もよく聞いていたので、正直なところ、少し不安もありました。

プロジェクト成功の鍵は、SAPの標準機能の使用

H.Y.
SAPの導入を成功させるためのポイントは、どこにあったのでしょうか?
M.Y.
SAPは、お客様の要望に合わせてカスタマイズをしすぎると、システムの安定性やコスト面で問題が発生することが多くあります。そこで、今回のプロジェクトでは、できるだけSAPの標準機能を使用し、個別のカスタマイズは最低限にとどめることに注力しました。この点については、古河電工のプロジェクトマネージャーがかなり厳正に対処されていて、それが成功の鍵になったと思います。
M.S.
それは、私もすごく感じました。プロジェクト全体の統制が適切にとられていて、常に目的地を明確にして取り組みを進めていく意識が共有されていたと思いました。また、古河電工の皆様は担当業務にかかわらず、既存システムやSAPへの理解を深めた上でプロジェクトに参画されていたので頼もしかったですし、M.Y.さんがおっしゃったように、皆さんがSAPのスタンダードに合わせることを強く意識されていたところも良かったと感じています。
H.Y.
私は、プロジェクトの定例会で各領域からしっかりとした報告がされ、全体の進捗状況を細かく把握・分析して、取り組みを進めていたところがすごく印象に残っています。他の案件ではスケジュール管理が緩やかな場合もあるのですが、このプロジェクトではほどよい緊張感があり、自然と「遅れを出さないようにしなければ」という気持ちになれましたね。

新しい言語、新しい機能。多くの困難を乗り越えて。

M.S.
このプロジェクトでM.Y.さんが最も苦労されたのは、どのフェーズですか?
M.Y.
それは、間違いなくプロジェクトに参加したばかりの頃ですね(笑)。そもそも必要な開発要員は社内だけでは足りず、プロジェクト管理や連携機能の構築を行うパートナーを集めることに苦労しましたし、開発においても我々はSAPの仕様や機能が分かっていない状態から入ったので、富士通の担当者に時間を取ってもらってSAPの基本的なことを教えていただいたりもしました。また、具体的な開発では、お客様が違和感なく新しいシステムを使えるように、従来のシステムのインターフェースを保つにはどうすれば良いかを考えるのは大変でしたね。M.S.さんは、どうでしたか?
M.S.
私も参加した頃はSAPそのものに馴染んでいくことが大変で、それは同時期に参加したメンバーも同じ感覚だったと思います。これまでの業務では、既存のパッケージを入れた場合、何かあってもそのパッケージのベンダーに聞けば、すぐに解決策が出てくることが多かったのですが、SAPはそうではないんですよね。自分たちである程度SAPについての理解を深めて、自ら解決していくことも求められるので、そういったアプローチに馴染んでいくのが難しくて、今でも少しハードルがあると感じています。
H.Y.
一番のハードルは、どのような点ですか?
M.S.
決まった型が見えないことですかね?マニュアル通りにやればいいのであれば簡単なのですが、SAPはシステムの裏側が非常に複雑なことに加えて、何か問題が起きた場合は自分たちで調べる必要があるんですよね。
M.Y.
少し補足すると、SAPは、経理、購買、販売といった企業の基本的な業務をすべてカバーするシステムで、非常に大規模かつ複雑である一方で、システムの詳しい内容が利用者に公開されていないという側面があります。そのため、システムの開発や運用を行う中で課題が出てきた場合は、基本的にその都度解決策を自ら調べていかなければ行けないのですが、SAPの奥深さというのはかなりのもので、一定の理解を身につけるまでに3~5年はかかると言われるほどです。また、SAPはどんどんアップデートや機能追加がされていきます。つまり、私たちはSAPの勉強をこれからも続けていかなければいけないということです。
M.S.
H.Y.さんは、どういったところに苦労しましたか?
H.Y.
私が担当していた「共通基盤」(SAPと既存の周辺システムをつなぐ基盤システム)でも、やはりSAPのことが分からないところで苦労しましたね。一例を挙げると、周辺システムからのデータをSAPに連携する方式を検討する中で、SAP側のデータの受け方を確認した上で、共通基盤からの渡し方を考えなければいけなかったのですが、その部分の情報が思うように集められなくて大変だったことがありました。

知らない技術を学び、習得するのは、やりがいに繋がる。

H.Y.
今回のプロジェクトではSAPに苦労させられた一方で、SAPを扱う面白さを感じることもありました。今もバージョンアップへの対応として、もっとSAPのことを知るために試行錯誤しているのですが、少しずつ手応えを感じていて、「もっと深く知りたい」という欲求が生まれてきているんですよね。
M.Y.
確かに、SAPの奥深さには苦労させられますが、そこがエンジニアとして面白さを感じるところでもありますよね。あとは、ビジネスの基本となる経理、購買、調達という業務自体のグローバルスタンダードを理解しながら、そのシステムであるSAPについても自分でどんどん調べて、知識やスキルを身につけていくことで、エンジニアとしてのスキルも高まったと実感しています。実際に、SAPの標準機能では対応しきれないお客様からの要望について、カスタマイズやプログラムの追加で対応していく必要がありますが、そうしたカスタマイズ等についてもSAPの知識をある程度身につけてからは、自信を持って提案できるようになっていきました。特に理系の人は、自分でどんどん調べて、理解を深めていくというプロセスに楽しさや喜びを感じるんじゃないかなと思いますね。
H.Y.
システムの構造やその背景にある思想を、段階的・論理的に理解していくような感じですか?
M.Y.
そうそう、最初は情報が少ない中でストレスを感じることもありましたが、少しずつ知識が身についてくると、「こういう仕組みで動いているんだ」とかそういったことも分かってくるんですよね。そうすると、お客様の要望に対して最適解を提案できるケースが増えてきて、お客様からも感謝されるので、さらにモチベーションが高まっていくんですよ。M.S.さんは、今回のプロジェクトのどのようなところにやりがいや面白さを感じましたか?
M.S.
SAPのデータベースは、今まで触ってきたものに比べると処理速度がすごく速いと感じたり、最初はそういった技術的なところで新鮮さを感じましたね。それから、SAPはABAP(Advanced Business Application Programming)というSAPだけで使われているプログラミング言語で作られている部分があります。それが少しずつ読めるようになってくると、それまで何となく「奥深い」と感じていたところが理解できてくるんですよね。そういった理解の深まりは、エンジニアとしてやりがいを感じるポイントの一つだと思います。
H.Y.
SAPについて問い合わせるときは、やはり英語ですよね?
M.S.
はい、だから大変なんですけど(笑)。分からないことを解決しようとする場合は、何ごともほぼ英語ですね。
M.Y.
マニュアルも英語で、Web検索で調べても基本的には英語のページですよね。
M.S.
翻訳サービスも含めてGoogleがあってよかったなと(笑)。
M.Y.
H.Y.
(笑)。
M.Y.
今回のプロジェクトでは、SAPの導入に伴ってシステム全体の構造も従来から大きく変わりましたよね。旧システムは古河電工の社内ネットワーク内にありましたが、新たに導入したSAPはSaaS型です。そのため、SAPと既存の周辺システムをインターネットを介して連携させる必要があり、その部分での連携方法やセキュリティの確保は自ら取り組まざるを得ない状況にありました。今後、SaaS型のシステムがますます増えてくれば、それに付随したシステム間の連携も必要になってきます。今回のプロジェクトでの経験をFITECの財産として活かし、これからもお客様に最適解を提供できるよう、邁進していきましょう。