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形状記憶・超弾性合金 古河NT合金
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2. 形状記憶合金の応用例
(FTM技資 1997.1)

2.1 形状記憶効果の応用
 形状記憶合金の主な応用例を紹介することで開発・設計の参考に供したい。
 形状記憶合金は特殊な形状記憶処理によって、図2・1に示すような二方向性を付与できるが、特性面の制約から、ほとんど実用化されていない。使用される場所の昇・降温に対して、作動をくり返すセンサ・アクチュエータとしての用途には、温度に対応した二方向性が要求される。それには一方向性の形状記憶合金素子にバイアスを組み合せる。
 アクチュエータとして使用するには、形状記憶合金素子に加熱手段を設ける必要がある。
 また、低温相の合金に変形を与えて、加熱することで一回だけ作動させる一方向の使い方もある。

図2・1  一方向性とニ方向性

図2・2  バイアス式ニ方向素子の原理

(1)バイアス法による二方向素子
  図2・2は、バイアスばねを使った二方向性素子と、その力関係を示した原理図である。この図では形状記憶合金ばねとバイアスばねが、両方合わせた変位量(ばねのたわみ)が一定(ここでは50mm)になるように圧縮して、押し合う形にセットされている。形状記憶合金ばねの発生荷重0の点を原点にとると、バイアスばねの荷重0の点は50mm離れた点になる。その点から、バイアスばねの変位に応じて、ばねの荷重は直線的に増加する。これに対抗して、形状記憶合金ばねの発生荷重は原点より変位量が大きくなる方向で増加し室温ではB点で、高温ではA点で力がバランスする。
このばね素子は、このA-B間で温度の変化に対応して作動することになる。この素子に高・低温時それぞれ50gfの仕事(有効発生力)をさせようとすると、バランス点がA、Bより50gfずつ発生荷重の差が大きくなる点A'、B'に移る。
  図2・3には、炊飯ジャーの調圧口に応用された例を示す。
  図2・4は、引張りばねの組合せで回転モーメントのバランスによる応用原理を示している。この原理の応用例として、図2・5に、エアコンのフラップ駆動機構を示しておく。
  図2・6にはバイアスに重りを使う場合の例を示した。スペース面での制約はあるが、変位によってバイアスの発生力が変わらないので、有効な力、変位が大きくとれる。
  図2・6には直線の例を示すが、ばねでも適用できる。
  図2・7には特殊なバイアスの例としてコネクタを示した。
  スリット群の先端を広げ、形状記憶合金のリングをはめて組立てられている。
  図示していないが形状記憶合金も、一般のばね材と同様に、板や線材の形で板ばねや、トーションバーとしての使い方ができる。いずれの使い方であれ、低温時に降伏応力が小さいので、変形しすぎないように注意すること、温度が均一になるよう工夫すること、など設計時から工夫が大切である。

図2・3  炊飯ジャー調圧口

図2・4  回転モーメントを利用したクランク回転機構

図2・5  エアコンのフラップ駆動機構

図2・6  重りを使ったバイアス法の動作原理図

図2・7  形状記憶コネクタの組立法

(2)一方向の使い方
  図2・8に示したのは、一度形状回復すれば、そのままの状態で使用される例である。他にパイプ継手などの応用例がある。

図2・8  形状記憶止めピンの動作原理

(3)通電加熱の例(図2・9)
  アクチュエータとして利用する時、通電方式が最も効率が良く反応が速い。線径の太い時は、電流が大きくなる欠点がある。また、耐久性を考慮して過熱しないように制御する必要がある。

図2・9  通電加熱中の形状回復挙動

2.2 超弾性の応用
  超弾性合金は、図2・10に見られるような応力-ひずみ特性を示す。特性を列記すると、以下のようになる。
(1)8%程度もの大きなひずみが、元に戻る
(2)降伏応力が比較的高く、その点でのひずみが大きい(1%を越えることもある)
(3)弾性係数が小さい(6,000〜8,000kgf/mm2)
(4)除荷時の応力が一定である範囲が広い(4〜7%)
(5)負荷時と除荷時の応力差(応力ヒステリシス)は、合金、加工熱処理によりある程度調整できる。
 超弾性の応用では、静的な特性を活用する他に、繰り返しの変形特性が要求されることが多い。図2・11に引張り変形時の疲労寿命のデータの一例を示した。繰り返しの応力が降伏点を越えて、応力誘起変態のおこる範囲では寿命は高々104である。図で直線の折れ曲がり点は応力誘起がおこる降伏応力に相当する。この降伏点を境にして変形の様式が変わると考えられている。応力的には降伏点を高くして、それ以下の応力で使えば高寿命の材料である。

図2・10  Ni-Ti合金アンテナ線の超弾性特性

図2・11  Ni-Ti合金の疲労寿命に及ぼす試験温度の効果

  以上のような特性を活用した応用製品としては、ブラジャワイヤ、眼鏡フレーム、携帯電話のアンテナ、歯列矯正ワイヤ等がある。
(1)携帯電話のアンテナ
 折れ曲がりにくいことが評価されて、携帯電話のホイップアンテナの芯材として採用されている。図2・12には、曲げ特性をピアノ線との比較で示した。三点曲げ試験で10mmまでの変位を与えた時でも、もとの形に戻っている。ピアノ線では5mmの変形でもひずみが残る。
(2)歯列矯正ワイヤ
 図2・13の写真に見られるように従来のワイヤでは弾性回復力を利用できるひずみが小さいために、曲げ変形を多く取り入れている。超弾性ワイヤでは、はとんど直線的に装着されている。材料の応力ーひずみ線図をみると、従来使われていたコバルト・クロム合金やステンレス合金に比べて、超弾性合金は比較的低い一定の応力で、広いひずみ範囲での使用が矯正に有効とされている。

図2・12  三点曲げ試験による荷重−変位曲線のピアノ線との比較

図2・13  歯列矯正ワイヤへの応用

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